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新設の「リビングキッチン Living Kitchen」に注目

ケルン国際家具見本市レポート@

ケルン国際家具見本市 Warendorfer Kuechen

ライブラリー:ずばり「図書館」というネーミングのキッチン。「かつて家族がみんなで火を囲んだ台所は、愛を象徴する場所だった。それが自分のデザインの根底にある」とデザイナーのフィリップ・スタルク氏。同氏はワーレンドルフから計4タイプのキッチンを発表している(写真提供:Warendorfer Kuechen)

今年1月にドイツ・ケルンで開催されたケルン国際家具見本市(imm)は、45カ国から約1200社が出展、計10万点の家具が展示された。中でも今回のハイライトは6年ぶりに登場したキッチン部門だ。”Living Kitchen”の名称で独立した見本市として開かれ、全体で10ホールの会場のうち3ホール、計40000平方メートルの展示スペースにキッチン家具、キッチン家電、金物などのメーカー165社が集う大規模なイベントになった。

ケルン国際家具見本市 Poggenpohl

ARTESIO:デザインしたハディ・テヘラーニ氏はハンブルク在住のスター建築家。成熟した男女のコミュニケーション空間としてのキッチンを提示した。ダイニングコーナーも同時にデザインしている。(写真提供:Poggenpohl)


システムキッチンといえば機能性とすっきりしたデザインで知られるが、今回の展示ではメーカー各社がその伝統を踏襲しつつ、同時に他社との差別化を図るため、それぞれに新機軸を打ち出していたのが印象に残った。

まずドイツのトップメーカーの動きで注目されるのが、異分野のクリエイターたちとの提携だ。たとえばワーレンドルフ社(旧ミーレキッチン)は製品デザイナーのフィリップ・スタルクがデザインした「ライブラリー」を展示のハイライトに据えた。「ライブラリー」はキッチンユニットの左右と上部を本棚でぐるりと囲い込んだもの。「これによってキッチンが、料理と食事だけでなく読書の場所にもなります。キッチンを家の中心と考える点で当社とスタルク氏のコンセプトは一致しています」と同社広報のカトリン・ラビツケさんは話す。一方、大手ポーゲンポール社は建築家のハディ・テヘラーニがデザインした”ARTESIO“を中心に展示。キッチンユニットがそのまま部屋の壁や天井になったような構成で、キッチン家具という概念を超えて空間全体のデザインを意図したアプローチが新鮮だ。先発の「ポルシェキッチン」と同様、リッチで成熟した大人がユーザーに想定されている。

ケルン国際家具見本市 ESPRIT  ESPRITキッチン
フロントの色は7色、壁パネルは25色から選ぶことができ、どの組み合わせでもシンプルでポップな色づかいが生まれる。価格は4000〜7000ユーロで、アルノ社ラインアップの中では中〜高レベルの価格帯だ。(写真提供:ALNO)

一方、中間価格帯のキッチンでは他業種との提携がさかんだ。アルノ社と、世界的な大衆ファッションブランドのESPRITのライセンス契約がその一例である。ESPRITは幅広い年齢層を顧客とするが、今回アルノから自社ブランドのキッチンを発売することで、近年伸びているインテリア部門をさらに拡充した。両社のデザインチームが共同で考案したESPRITキッチンは、ファッション同様に親しみやすくシンプルな味わい。「キッチン購入が初めてでなく2度目になる20代以上の顧客層」(同社広報)をターゲットに4月から販売を開始する。同様にバレリーナ・キュッヘ社は、カラフルなビールグラスや食器でドイツ市場に浸透しているリッツェンホーフ社と提携、同社契約のグラフィックデザイナーに、キッチンのフロントとグリップ(取っ手)の模様をデザインさせた。表面に加工するだけで簡単に「キッチンがアート作品になる」(同社広報)のがセールスポイントだ。以上の2例は、キッチンメーカーにとっては提携企業の知名度を利用したブランディング戦略の一環であり、一方、ESPRITやリッツェンホーフには提携先の既存販路やノウハウを活用して容易に市場参入できるというメリットがある。

ケルン国際家具見本市 Ballerina Kuechen

バレリーナ+リッツェンホーフ:家具のドアとグリップ(取っ手)部分にカラフルな表面加工が。キッチン家具にもリビング家具にも適用できる。模様はリッツェンホーフ社契約の4人のデザイナーがデザインした。これは日本人の伊藤志信氏によるデザイン。(写真提供:Ballerina Kuechen)

ケルン国際家具見本市 JETTE

JETTE:ドイツの女性ファッションデザイナー、ジェット・ヨープ氏のデザインによるキッチン。中堅メーカーのRWK社が生産し、今年発売開始する。「キッチンは住まいの宝石」と語るヨープ氏の華やかな個性が感じられるキッチン。(撮影:田中聖香)

このほかにも、フロントの素材に天然石やセラミックを使って触感に訴えるキッチン、リモコン操作で戸棚やオーブンが昇降するハイテクキッチンなども紹介されてバラエティに富んだ展示内容だった。
キッチンを「料理する場所」という役割からグレードアップさせ、使う人のステータスやライフスタイルを表す空間とすること。システムキッチン業界全体に共通するこの哲学を、各社はそれぞれの戦略に合わせて具体的に展開している。そして地元ドイツでは消費者もその認識を共有していることが、見本市の来場者数にも表れていた。“Living Kitchen”には会期後半3日間の一般公開日にバイヤー以外の一般来場者が詰め掛け、imm全体では総来場者数13万8000人、前年比38%増という数字を記録している。
                                                         (田中聖香)

(2011/03/02)

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